社外相談窓口

ハラスメント対策最前線風通しの良い職場づくり -CSR活動の一環として-(8)

CSRが浸透している成功例

これまで、「CSRと風通しのよい職場づくり」について多方面から書いてきました。今回は総括として、実際にCSRがうまく浸透している会社を取り上げ、その成功要因を具体的にお伝えします。

CSRの考え方やモノの見方が現場に浸透し、取引先や地域社会との信頼関係を築いているのは、地方にある従業員300名ほどの工場T社。従業員一人ひとりが、経営トップの掲げる理念・ビジョンを自分の仕事につなげて働いています。また、自分の立場で何をすべきかを理解して行動し、それぞれ個人が力を発揮できるように互いをサポートしています。

T社がCSR浸透に成功している理由の1つは、経営陣のマネジメントスキル、コミュニケーションスキルがともに高いこと。グローバルに事業を展開していることから、ダイバーシティ・マネジメントの意識が強く、日ごろからコーチング、ロジカルシンキング、アサーション、プレゼンテーション、タイムマネジメントなどの研修や訓練が徹底して行われています。

大切なのは丁寧なコミュニケーション

では、T社では具体的にはどのような方法で、マネジメントスキル、コミュニケーションスキルを上げ、会社の理念・ビジョンを社員一人ひとりに浸透させているのでしょうか。それは、新入社員研修のときから始まります。入社して初めての研修で会社の理念やビジョンを共有するのですが、その方法に特徴があります。

研修では新入社員が自分の価値観を確認することから始まります。社内講師は、仕事や人生において何を大事にしているのかを、一人ひとりに丁寧に聞いてから、T社の価値観である理念、ミッションを伝えます。次にT社の理念、ミッションにおいて新入社員が共感できる点を確認し、「目指すゴールに向かって、いっしょに仕事をしていきましょう」と気持ちをすり合わせていくのです。

「これがわが社の理念、ミッションです」と一方的に押しつけるのではなく、「あなたの大事にしているものは何ですか」と社員の話をよく聞き、社員への理解を深める――そこから価値観の共有を始めているのです。

こういったコミュニケーションは新入社員研修で終わるのではありません。例えば、期末に行われる上司との面談では、「あなたは何がやりたいの?」と従業員が自分でどう行動したらよいかを考えさせる質問をしています。リーダーの基本的な姿勢として、相手の目線になって物事を考え、話をよく聞くことで相互理解を深めていきます。また、違う意見の従業員がいる場合も、否定したり排除したりせず、同様の姿勢で接していきます。丁寧なコミュニケーションを継続的に取っていく中で、社員は社内で信頼関係を構築し、会社の理念、ミッションに沿って自然と動くことができるのです。

CSR浸透におけるこれからの課題

「CSRが浸透していかない」と嘆く会社では、このような丁寧なコミュニケーションやマネジメントを行っているでしょうか。もし行えていないのだとすると、形だけのCSR経営や見栄えの良い報告書作成に陥っているのかもしれません。

CSRの本質を追求し、社員の目線に立って分かるように伝え続けていくのは、時間も労力もかかります。しかし、丁寧に継続的に行うことで社員一人ひとりが持てる力を発揮することにつながります。結果的に、会社が社員の働きがいのある職場になり、生産性・売り上げ向上につながり、経営的にプラスになります。簡単ではないかもしれませんが、できるところからぜひ実践していただきたいと思います。

※ 村松先生には次回から『風通しの良い職場づくり―CSRの一環として―』に代わり、新たなテーマで連載いただく予定です。お楽しみに!

(2015年6月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
NPO法人GEWEL(ジュエル)代表理事
一般社団法人経営倫理実践研究センター 主任研究員
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
経営倫理実践研究センター主任研究員、日本経営倫理士協会理事、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

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