海外ハラスメント問題第10弾 職場いじめの防止~いじめの現状と対策~ エヴリン・フィールドさん(その2)

第10弾 職場いじめの防止~いじめの現状と対策~ エヴリン・フィールドさん(その2)

エヴリン・フィールド氏
今回は前回に続き、エヴリン・フィールド氏が来日時に発表した『職場いじめの防止~いじめの現状と対策~』より<対策>について、様々な立場からの取り組み例をお伝え致します。

今回で、海外ハラスメント事情をいったん終了させていただきます。これまでお読みくださり、ありがとうございました。

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被害者としての取り組み

アメリカ職場のいじめ協会(Workplace Bullying Institute)のルース・ナミエ博士(Dr. Ruth Namie)は「あなたの健康を犠牲にする仕事なんて価値がない」と言っています。
職場で“犠牲者”にならないためにも、いじめに遭っている人、あるいは目撃して不快な気分でいる人は、以下のことをするとよいでしょう。

  • いじめを詳細に記録する
  • 自分の身体的、情緒的健康に注意を払う
  • 職場のいじめに関する世間一般の情報を収集する
  • 労働組合や弁護士に相談する
  • セラピーやコーチングなどを受ける
  • どのようにいじめと対処したら良いか専門家の意見を聞く、グループに参加する
  • 行為者やマネジメントと対面するとき、彼らが心配そうにしているかどうか観察する。
    もし心配そうでなかったら、自分自身を守る態勢をとる。
    彼らからのフィードバックが励ましのある前向きなものであれば、解決へ向けて動く
  • より効果的に社会で生きられるようなスキルを身につけ、アサーティブになり、
    自分自身のサポート・ネットワークを築き、より実際的なコミュニケーションをとる

マネジメントとしての取り組み

雇用主やシニアマネジメントには仕事や職場風土の改善に責任があります。組織全体と関わり、方針をととのえ、実行する必要があります。統計的に見れば、いじめはほとんどの職場で起こるため、起きている事を認識し、解決することがのぞまれます。

具体的には以下のようなことが考えられます。

  • 自分がされたいように人にも接する
  • 建設的な行動基準、方針を策定する
  • 予防する
    例えば、仕事内容を明確化する、役割のバッティングを減らす、小さな嫌がらせに気をつける、
    職場のレイアウトに気を配る、安全な報告機能を設ける、コーチングや研修を受けさせるなど。
  • いじめ防止対策本部を設け、調査を常に行い、適宜ふさわしい取り組みを採用する
  • 記録をする
    いじめの有無を判断し定量化する
  • 記録を残す
    実績評価、スタッフの入れ替え、病欠など
  • 職場のいじめに関する理解を促す
    組織の全階層に向けたPR及び研修の実施、トップに対して「ハラスメントをさせない」研修をし、下のメンバーには「ハラスメント行為をされたらNOと言う」という研修を行う。ハラスメントの加害者側・被害者側のどちらかが有利になってしまうような環境を作らない。
  • 早期介入する
    対面する、対話する
  • 協調的に危機管理を図る
    相談に対する調査を実施し、対立の緩和を進める。敵対的な方法(苦情調査、調停/和解、裁判等)だと、「いじめる側をいじめる」ようになってしまい、結果的に弁護士以外誰も得しない。協力的な方法(感謝と調和を伴う改革に向けたアプローチ)であれば、すべての人から話を聞き、一緒にどうしたらよいのか考えることでお互いに尊重しあって解決することができる。しかも弁護士費用はかからないのでコストも安く済む。
  • 適切な処分を適用する
    降格、解雇
  • 適切な機会を提供する
    カウンセリング、コーチング、再研修

いじめを目撃したら

  • 立ち話等、気軽な会話で早めに介入する
  • どちらかの味方になるほうが易しいように思えるかもしれないが客観的な立場を保つ
  • 直感に従う
  • 人の気持ちを操作しようとする同僚や従業員に気をつける
  • シンプルな解決策はないので、日頃から気をつけて、いつでも向き合える心づもりで、フレキシブルで、クリエイティブで、そして、倫理的であることに努める
  • 自分自身のマネージャーやシニアマネジメントに相談する

すべての従業員ができること

  • まず、どんな形であれ話すことが大切。いじめ・ハラスメントを受けていると感じたら、「何か悪いことをしましたか?」と自分から聞いてみるなど、どんな内容でも良いから関わりを持つ。
  • 良い成績をあげた際に上司からいじめられることもあるので(上司を脅かす存在となるため)、他の人から受けた良い評価を記録に残しておくと良い。
  • 自分でも気づかないうちに他人に不快感を与えていることもあるので、たまに周りの人に「何か迷惑をかけていることはありませんか?」などと聞いて、もしあればその部分を直すようにすることも、いじめやハラスメントをそもそも受けないために有効。

一般的にできること

私は「社会的サバイバルスキル」(社会を生き抜く技)を培うモデルを開発しました。これは、いじめから身を守って生きるために有用なスキルですが、相互尊重の社会に向けて人々が一般的に取り組むことができるモデルでもあります。

  1. 自分の感情を制御する
    まずは自分がどんな感情(喜び、悲しみ、怒り、恐れ)を持っているのかを知り、それを定量化・数値化する。「私は~と感じている」と口に出す事も良い。
  2. 原因を知る
    自分自身や他人を責めることなく、なぜそのようなことが起こったのかを理解する。
  3. 自分自身を大事にするために自尊心を再構築する
    自分自身に投資する。他の人に分け与える。
  4. 効果的なコミュニケーション・スキルを用いる
    はっきりとした声で、「私は~と思う」「私は~感じる」「私は~したい」と言う。特に用がなくても軽く雑談話をするなど、何らかの形で相手とかかわることが大切。アイコンタクトと、「私」という主語は非常に重要。それは私たちがアサーティブで自信があるということを示す言語的・非言語的コミュニケーションである。
  5. 自分を守り元気づける
    例えば「あなた、太ってるわね」と言われても、「だから?」と返す。「仕事辞めたら?」と言われても、「だってお金が必要だもん」と返す。ネガティブなことを言われたとしても受け流すことが大切。
  6. サポートネットワークをつくる
    4~5人の仲間の集団になる。同僚・友人・上司に助けてもらう。面倒見の良い人でいる。自分たちの身を守る為に家族や本当の友だちと一緒に支援ネットワークをつくる。

最後に

皆さんご存知のように、いじめの原因となる要素はいくらでもあります。ただ、私たちは社会的な生き物なので、だれもが何らかの種族に属すようにできています。私たちは誰もが職場で気の合わない同僚と関わる必要があり、ちょっと異質だからといってその人を排除する事はできません。だからこそ私たちはコミュニケーションをうまくとり、関係性を築くことの重要性を知る必要があります。いい人になってじっと耐えるというのは十分ではなく、いじめる側から身を守る必要があります。それは、自分が自分を尊重し、自らの権利を主張するということです。とても面白いことにその取り組みを始めると、私たちはだんだんと他の人々からも尊重され始めます。

どうぞ、皆さんも「和を以って貴しと為す」のように、調和をもった協調的アプローチで職場でのいじめ防止に取り組んでいただきたいと思います。ありがとうございました。

(2013年4月)

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