アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第13回 あいまいな「快」と「不快」の境界

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします。

事例に学ぶ 人間関係のトラブル

第13回 あいまいな「快」と「不快」の境界

山村浩二さん(仮名、20代)は、忘年会以来、憂うつな日を送っていた。原因は、幹事として張り切って準備した余興。回転式丸テーブルに握り寿司を十数個並べ、中に1個だけてんこ盛りのワサビを仕込む。ロシアンルーレットからヒントを得ており、寿司の数だけ円卓を囲んだ人たちは、「ストップ!」の合図で自分の目の前に来た寿司を食べるという趣向。ちょうど宴もたけなわの頃に余興は始まった。ヤンヤ、ヤンヤの大喝采の中、ワサビ寿司を引き当てた不運の持ち主は、日頃から真面目な仕事ぶりで一目置かれている総務課の田上律子さん(仮名、40代)だった。田上さんは、ワサビのせいとばかりは思えぬ真っ赤な泣き顔で無理やり作り笑いをし、その表情が「可笑しい」と周囲に大爆笑の渦を引き起こした。翌日、田上さんは「体調不良のため」欠勤。その後、田上さんから山村さんへ「皆の前で恥をかかされた」、「人権侵害ではないか!」との抗議メールが送られてきた。

「受け取り方」の違いを理解する

日頃、交流の機会の少ない社員が一同に会して親交を深める場を、いかに賑やかに盛り上げるかは幹事の腕の見せどころです。したがって、ノリが良くフットワークの軽い人が抜擢されることが多いのもうなづけます。しかし、参加社員の皆が皆、ノリが良いわけではなく、宴席での楽しみ方は千差万別でしょう。とりわけ、「ジョーク」の受けとり方は、立場、価値観、性格などによって異なるため、公の場では慎重な扱いが求められます。本件のような衆人環視での「ジョーク」はもちろんのことですが、日頃、職場でみられる「軽い冗談」も、トラブルの芽となる危険をはらんでいます。ある人(たち)にとっては「快」である、という事実が、別の人(たち)にとっては「不快」であるという、もう一つの大切な事実を隠蔽してしまうのです。そして、「不快」の声は上げにくいことが特徴です。山村さんの場合、その後、部長の仲介で田上さんに丁重に謝罪し落着しましたが、見過ごされ、積もり積もってハラスメントや人権侵害の火種となるものも少なくありません。あなたの「快」は、誰かの「不快」につながっていないか、そもそも「快」と「不快」の境界は何なのか、身近な人たちと話題にしてみてはいかがでしょう?

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年1月に掲載されたものです。

カウンセラー 志村 翠

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