ハラスメント・インサイトこれからのダイバーシティ施策~リスキリングを経て

これからのダイバーシティ施策~リスキリングを経て

『ハラスメント・インサイト』は、厚労省や人事院のハラスメントに関する委員会メンバーを歴任してきた弊社取締役・稲尾 和泉による連載です。
今日、人権やジェンダー、雇用形態、雇用環境、経営問題、心理、人間関係など様々な問題と複雑に絡み合っているハラスメント問題に関するインサイト(洞察)を読み解き、今、職場づくりで求められていることを、ハラスメント対策の切り口として示して参ります。

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毎年2月は受験シーズン。朝早くから参考書を手に受験会場に向かう子どもたちを見て、いつも心の中で「頑張って!」と応援しています。今年は我が家にも大学受験生の息子がおり、私もわずかながら受験勉強の手伝いで世界史の参考書を読んだのですが大変面白く、気がつけば何時間でも読んでしまいます。その中で、今の仕事にも通じる気づきを得られました。これもある種、近年話題の「リスキリング」であると思っています。

改めて学んだのは『排他的で暴君の時代は短命に終わり、多様性を大事にする時代は長く続く』ということです。例えば、古代オリエントのアッシリア帝国は、武力的・威圧的な統治をした為政者の死からわずか40年で、4つの国に分断されてしまいます。しかし、その後にオリエントを統一したアケメネス朝ペルシアは、それを教訓として他民族に対して寛容な政策をとった結果、広大な領土であるにもかかわらず200年以上も続きます。セクハラやパワハラが起きる職場はダイバーシティが進まず、威圧的、排他的です。そういう組織はいずれ人がいなくなり衰退するということを、まるで歴史が証明しているかのようです。

また、インターネットの普及で世界中がリアルタイムでつながる現代社会は、数万年に及ぶ人類史上まれに見る『多様性が可視化される』時代になりました。自分の身の回りに起きていることが「常識」だと信じられていた時代は終わり、各々の土地が持つ気候や風土、習慣や宗教などによって、様々な生き方や価値観があることが分かった今、やみくもに「これが正しい。あれが間違っている」とは言えなくなっています。それゆえに、自分の正当性を求めて世界中の人とつながりあっては「いいね!」をもらうことで安心し、他方で異なる意見や習慣を脅威とみなし、過剰な攻撃を仕掛けたりするのでしょう。

これからのダイバーシティ施策は、価値観や生き方・趣味や関心ごとで個人がつながり、国籍や人種、性別などの「属性の垣根」を超えた人たちと、それを理解できない、あるいは否定する人たちがどう繋がっていけるかが鍵になると感じています。多様性の尊重とは、従来型の生き方や考え方も多様性の一部として排除しないことも含んでいます。「そんな考えは古い」と排除してしまうのではなく、共通点を探しながらつながり続けることで、企業の成長につなげていきたいところです。

2023年2月

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