ハラスメント・インサイト就活ハラスメントの防止に向けて

就活ハラスメントの防止に向けて

『ハラスメント・インサイト』は、厚労省や人事院のハラスメントに関する委員会メンバーを歴任してきた弊社取締役・稲尾 和泉による連載です。
今日、人権やジェンダー、雇用形態、雇用環境、経営問題、心理、人間関係など様々な問題と複雑に絡み合っているハラスメント問題に関するインサイト(洞察)を読み解き、今、職場づくりで求められていることを、ハラスメント対策の切り口として示して参ります。

これまでの連載はこちらをご覧ください。

3月7日に、厚生労働省から「就活ハラスメント防止対策企業事例集」が公表されました。就活ハラスメントの防止に向け、取り組みが進んでいる企業10社の事例を紹介しているほか、学生向けの予防に関する情報も掲載されています。

厚労省が令和2年に行った調査には就活ハラスメントの実態も含まれていますが、ハラスメント行為者にインターンシップ先の従業員や、企業の採用面接担当者、リクルーターなども多いことに驚かされます。性別を問わず被害を受けており、内容としてはセクハラ被害が多く、性的な冗談やからかいが4割、食事やデートの執拗な誘いも3割弱と、典型的なパターンとなっています。「ハラスメントをしてはいけない」という周知啓発は、大企業で9割、中小企業でも7割以上が実施しているにもかかわらず、どの企業規模においても就活ハラスメント行為が認められます。

対談「就活ハラスメントの実態と対策のすすめ
(株)クオレ・シー・キューブ 取締役 稲尾和泉 × 就活ハラスメント検討会事務局 木村節子氏

おそらく、行為者はハラスメント言動を自覚しておらず、恋愛感情の延長線上であったり、よいコミュニケーションのつもりで行っている可能性が高いと考えられます。「NOと言われなければ大丈夫だ」と安心しているのかもしれません。日本では「相手が不快に感じたらハラスメント」という認識が広まっていますが、それが「嫌と言われなければOK」と勘違いしたり、「嫌ならそう言えばいいのに、言わない方が悪い」と被害者に責任転嫁したりと、ハラスメント行為が改善されない背景となっています。

ある言動がハラスメントかどうかを考える際には、「尊厳や人格を傷つける言動かどうか」に注意を向けることが肝要です。就活生がハラスメント行為者にNOを突きつければ内定を取り消されるかもしれない、と不安を感じるのは当然で、そのような不安を想起させることが、そもそも就職活動における個人の尊厳を傷つける行為といえます。

また各種の研究結果から、パワーを持つ者は持たない者への想像力が欠落し、横柄で相手を見下す傾向が高まることがわかっています。若年層のリクルーターがハラスメント行為者になってしまうのは、従業員と就活生という圧倒的なパワーバランスの格差が、「これくらいは大丈夫だろう」とか「断れないだろう」という優越感を、無意識に持ってしまうからでしょう。年齢や性別に関係なく、誰もがこの罠に陥る可能性があります。

3月1日には次年度の就活が解禁になっています。今一度、企業内で就活ハラスメントに関する注意喚起を行ってはいかがでしょうか。

2023年3月

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