社外相談窓口

ハラスメント対策最前線感情労働について(4)

Q.「コミュニケーションの良い職場」であれば、感情労働の現場は救われるのでしょうか。
A.その通りだと思います。少なくともパワハラ(パワーハラスメント)・いじめは今よりもずっと少なくなるでしょう。その前にそもそも「コミュニケーションの良い職場」とは何かを考える必要があります。

コミュニケーションとは

私達は、一般に「コミュニケーション」を情報や知識、感情などの「伝達」と考えがちですが、本来コミュニケーションは一方的なものではなく、「発信」と「応答」という双方向の交流が必要とされており、「意見の疎通」とか「心や気持ちの通じ合い」、「互いの理解」とは、このような意味のことです。このように理解した場合、「コミュニケーションが成立している」と胸をはって言える職場はどれだけあるでしょうか?

例えば厚労省が2012年12月に発表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、「(パワハラ等の)予防解決のための取組みを進めることで起こる問題として懸念されるもの」として、「上司と部下との深いコミュニケーションがとれなくなる」と回答する企業が、約3割に達しているのです。パワハラ・いじめの解決を図ることが、コミュニケーションを阻害する?という発想自体に、コミュニケーションに対する無理解があると言わざるを得ません。

このようにみたとき、上司と部下との間にコミュニケーションを成立させるには、とりわけ上司の努力と時間が必要とされることになります。前回Q3で述べた通り、上司が部下にあれこれ指示しても、部下が本当に理解していないと、コミュニケーションは成立していないことになり、そこで「何やっているんだ」と怒鳴れば、その瞬間にコミュニケーションは「断絶することになるのです」。

上司の叱責でも・・・

上司の叱責でも、コミュニケーションのとれている関係とそうでない場合とでは違ってくることになります。例えば海上自衛隊の幹部候補生(三等海曹)であった亡Aさんは、直属の上司Bから、「バカかお前は!三曹失格だ!」などと厳しい叱責をくり返されたのを苦に自殺したケースで、判決は、Bの行為は亡Aさんを侮辱するもので指導の域を超えると違法としています。他方上司Cが亡Aに、「ゲジC」(=トランプの最低カードのこと)などと罵声をあびせた行為について、判決は、Cと亡Aさんが良好な関係にあり、CがAに好意を持って接する中での発言であったとして、違法性を否定しています(海上自衛隊事件・福岡高判平20.8.25判時2032号52頁)。

上司の叱責等の言動が、コミュニケーションの成否によって評価が分かれたケースであり、このように適切な感情管理こそがコミュニケーションを成立させ、いじめやパワハラのない良好な環境の職場を作っていくことにつながるといえるのです。

(2013年11月)



プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

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