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ハラスメント対策最前線感情労働について(10)

Q.ある調査によると、感情労働に属するような「苦情の処理」「電話オペレーター」「レストランやホテルなどの受付係」「電話販売員」「レジ係」等々は10年後に消える職業と言われていますが、どうなるのでしょうか?
A.そうですね。実際のところどうなるのでしょう、見てみましょう。

(1)働く人の半数の職が近い将来なくなる?

野村総研は2015年12月、英オックスフォード大学准教授などとの共同研究の成果として、現在我が国で働いている人の約半数の仕事が、人工知能(AI)やロボットによって、10~20年以内に代替可能になるという衝撃的な研究結果を発表し、具体的な職種としては、スーパー店員、ビル清掃員、警備員、建設作業員、タクシー運転手などを挙げ「特別なスキルや知能を必ずしも必要としていない仕事、データ分析や体系的で予測可能な操作が求められる仕事は代替可能性が高い」と指摘しています。
この調査は、さまざまな職業について、コンピューター化の障害となりうる9つの仕事特性 ― ①他者への支援・世話、②説得、③交渉、④社会的常識、⑤芸術、⑥創造性、⑦手先の器用さ、⑧指の器用さ、⑨窮屈な作業空間 ― を抽出した上で、それぞれの仕事の消滅率を割り出しています。
同調査によると、ビッグデータによって膨大な量のデータ分析が可能とされるようになった結果、従来非ルーティン作業と思われていた仕事のルーティン化が可能となりつつあり、またセンサー技術の進化で、従来人間しかできないとされていた認知能力を備えた機械が登場するようになったことに注目しつつ、9項目の仕事特性のうち、①~⑥はコンピューター化のリスクが比較的低く、⑦~⑨は、比較的高いものとされ、このような分析手法に基づくと、コンピューター化のリスクが比較的低い業種は、ヘルスケア、芸術、経営、教育、技術など、比較的クリエイティブな仕事に従事する者に多く、他方リスクの高い業種は、交通・運輸、製造、保守・修理、建設、農林水産、事務、販売、サービス業などに多いとしています。

(2)コンピューターは人間の仕事を奪うのか?

コンピューターが最も得意とする分野は、これまでのさまざまな調査結果からは、テーマに関する事項の検索、分類、審査、最適化などであり、これらに関する仕事が少なくとも近い将来大幅に自動化されていくことは明らかでしょう。
ホワイトカラーの場合、今日検索や分類に占める作業割合は相当なものであり、例えば営業活動では、「この人にはこれが合う」と勧める行動は分類と見なされ、某インターネット大手の書籍推奨システムはこのようなものであり、また弁護士の判例検索や病院の診断支援なども同様のものであり、更に銀行の与信審査や特許審査なども分類、審査作業であり、このような作業が自動化、機械化されることにより、これらの作業に要する人間労働が大幅に不要とされることになるでしょう(例えば従来10人でこなしていた仕事が2人になる)。
このように、データ分析や秩序的・体系的な操作を求められる仕事や、特別なスキルや知識を必要とされない仕事は、AIやロボットに代替される可能性が高く、他方、抽象的な概念を創出したり、他者との協議や説得、感情管理を必要とする仕事は、代替可能性が低いとされているのです。
ちなみに前述した調査では、代替可能性として、米国では47%、英国では35%、日本では49%と日本での割合が英米を上回るとし、その原因について、主としてパートタイマー、派遣、契約社員などの非正規社員の労働生産性が低く、AIやロボットで代替できる仕事の占めている人の割合が多いことが指摘されており、非正規社員が担当する仕事が、AIやロボットに対する代替可能性が高いことに注目する必要があるでしょう。

(3)コンピューター化と感情労働

抽象的な概念を創出したり(知的労働)、他社との協議や説得、感情管理を必要とする仕事(感情労働)は、予測を立てることが難しい分野であり、コンピューターが最も不得意とするものであり、近い将来、コンピューターに代替される可能性は低いと言えるでしょう。前述した例でも、例えばアロマセラピスト、学校カウンセラー、観光バスガイド、教師、保育士、看護師などいずれも、他者との感情管理が強く求められる仕事に従事している人々なのです。

(2015年12月)



プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

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