社外相談窓口

ハラスメント対策最前線職場のダイバーシティ(4)

LGBTの人々の働きづらさやセクハラ(セクシャルハラスメント)などの法的トラブルはどのようなものでしょう?それに対する法的対応はどのようになっているのでしょうか?

はじめに

職場のダイバーシティとして、LGBTを考えるに際して、そもそも性的マイノリティとはどのような問題なのかを理解することからスタートする必要があります。何故ならば、社会には性的マイノリティに対する誤解が広範に蔓延しており、それが結果として差別や偏見に繋がり、私達の何気ない言動が性的マイノリティの人々に苦痛を与えている事が多いからです(例えばゲイの人に「どちらが男性役なのですか?」などと質問する)。そこで今回はLGBTの初歩からお話をさせていただくことにしましょう(このテーマは数回に分けてお話する予定です)。

性の多様性とは?

まずはじめに性の多様性とは、①身体的性別(Sex)、②性自認(Gender Identity)、③性的指向(Sexual Orientation「志向」「嗜好」ではない!)の3つのレベルに分けて考える必要があり、それぞれにマイノリティの人々がおり、それを図示すると次のようになるでしょう。

性 差 多数派 少数派
①「身体」 男性女性
の身体
半陰陽
(インターセックス)
②「性自認」 男性/女性
の性自意識一致
トランスジェンダー
(「性同一障害」など)
③「性指向」 男性/女性
の異性愛
同性愛
(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル)

①身体的性差は、言うまでもなく生物学的性差(遺伝子、内性器、外性器など)のことであり、ヒトを含む大半の動物は、男女のいずれかの身体的特徴を有しており(圧倒的多数派)、一般に男性maleは「子供を産むことのできない性」、女性femaleは「子供を産むことのできる性」とされ、半陰陽(インターセックス、男性と女性の性的な特徴と器官を兼有する)の人々が、極小数にいます。

②性自認(ジェンダー・アイデンティティ)は、自分の性をどのように認識しているのか、即ちどのような性のアイデンティティ(性同一性、自ら「女性」か「男性」か、どちらでもないかなど)を自分の感覚としてもっているのかを示す概念であり、「心(精神)の性」とも呼ばれています。性自認は、①の身体的性別との対応関係にあるか否かによって区別され、多くの人々は性自認と身体的性(いわば「男らしさ」と「女らしさ」)が一致していますが、少数派の人々はこの両者が一致しないことになり(性的異和)、このような人々はトランスジェンダー(TGと略)と呼ばれています。

ところで性的異和の程度は、さまざまであり、身体を変えてしまいたい(いわゆる性転換)と思う人から、別の性別で生活をしたいと思う人、服装だけ別の性別のものを身につけたいと思う人までさまざまであり、例えばテレビタレントであるはるな愛さんやマツコ・デラックスさんなどが有名ですね。
もっともトランスジェンダーと、③の性的指向(後述)とは全く別のことであり、トランスジェンダーの人でも、異性愛者、同性愛者、両性愛者などさまざまです。

トランスジェンダーで最も性的異和の程度が強い人々は、いわゆる性同一性障害(GID Gender Identity Disorder)と言われ、わが国では平成16年施行の性同一性障害特例法により、一定の要件を満たす者について性別の取扱いの変更審判を受けることができるようになりましたが(平成20年改正法で要件緩和)、今日でも主としてこの人々が、偏見の目を向けられたり、職場などで不適切な取扱いを受けており、その問題は次回に書くことにしましょう(続く)。

(2017年4月)



プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

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