社外相談窓口

ハラスメント対策最前線職場のダイバーシティ(7)

Q.最近「#MeToo」運動の広がりの中で、再び職場でのセクハラや性的被害が大きな問題となっていますが、ダイバーシティとどのように関わりますか?
A.職場で女性が安心して働き活躍できるためには、女性蔑視や性的被害があってはならず、ダイバーシティの推進にとって不可欠の課題です。

1.「社外」セクハラ被害の広がり

テレビ朝日女性記者へのセクハラ発言疑惑で、財務省事務方トップが辞任に追い込まれましたが、近年特に目立つようになってきたのは、このような取引先や顧客からの「社外」セクハラ被害であり、従来からの社内での上司や同僚からのセクハラに比べ、被害が顕在化しづらい面があります。このようなケースでは、上司に被害を訴えても、取引先との取引中断を恐れたり、顧客への評判などを「忖度」したりして、被害をまともに取り上げてくれず、結果として泣き寝入りとなることが多かったことによります(今回のテレビ局の幹部の当初の対応も同様)。
しかしスマホなどのモバイル機器の普及により、特に営業職や店舗などのサービス部門を中心に、「社外」セクハラは増加しており、今回の事件も同様のものです。今回のセクハラ事件に関する集会では女性記者からの手紙が紹介され、そこには「夜の電話で『今度キスしような』、取材のアポ(約束)を確認するメールで、『デート楽しみにしています』、『女性記者はホステスみたいなものだからな』等、本当は冗談で終わらせてはいけないとわかっていても、気持ちを押し殺して笑顔で返したのは何故か。取材相手だからです。私を含めて数え切れない女性記者が、我慢を重ね屈辱に耐えていることに思いをはせて欲しい」と述べています。

2.セクハラの法的問題

セクハラが不法行為に該当する場合、加害者は被害者に損害賠償義務が生じることになり、また企業も雇用機会均等法に基づき、セクハラ対策が義務づけられ、加害者が取引先や顧客など社外の人物であっても対策を講じなければならず(同法11条)、更にセクハラ対策指針では社員からセクハラ被害の訴えがあった場合、速やかに事実確認をし、被害者の配置転換などの対応や取引先に指摘することなどの再発防止に取り組むことを求めています。
このようにセクハラに対しては法的対処が整備されつつある中で、上述したセクハラ被害が絶えない理由として、セクハラ被害の訴えに対する一部の人々の無知無理解があり、今回の記者に対するセクハラ事件でも、週刊誌に録音データを渡した女性記者へのバッシングがあり、下村元文科相に至っては「ある意味犯罪だ」などと、告発した被害者を犯罪者扱いするというとんでもない発言までしていました(下村氏はその後謝罪して発言撤回)。
そもそも働く者が、自らが属している企業の違法行為や就労に際しての他者から加えられる非違行為(セクハラが該当することは明白!)を告発すること(いわゆる内部告発)は、正当な行為であり、わが国でも2004年制定の公益通報者保護法によってこのような内部告発は、保護されており、セクハラが違法不当なものであるということに関して、上記のような対応は無知無理解に基づくものです。

3.女性の尊厳はダイバーシティの大前提

2017年末「今年の人」として米タイム誌の表紙を飾ったのは、沈黙を破って「#MeToo」運動を推進してきた性的被害を受けた女性達であり、今日米国企業の幹部人選には、性的ハラスメントに関する厳格な「身体検査」が求められるようになってきています。
ひるがえって日本では、2016年4月に女性活躍推進法が全面施行され、女性の就業率上昇など一定の成果が出てきているものの、女性蔑視を容認する社会環境が著しく改善したとは言えない現状であり、ダイバーシティを推進するためには、女性の尊厳が強調されるべきです。

プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

その他の記事

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