社外相談窓口

ハラスメント対策最前線職場のダイバーシティ(10)

Q.<障害者雇用の実態は?その1>
職場の実態として、法令遵守さえしていれば、ダイバーシティが進むのでしょうか?例えば障害雇用のポイント制(法定雇用率)など?
A.最近大問題となった国などの公的機関での障害者雇用水増し問題は、法令遵守さえしていない実態が明るみにされており、ダイバーシティ実現のためには、障害者雇用促進を早急に実現すべきです。

1.障害者雇用水増し問題

2018年、約8割の中央省庁や地方自治体など公的機関で、障害者手帳や診断書などによる確認を行わず、実際には該当障害者でない人や既に退職した人などを、雇用したことにして雇用率に計上し、中央省庁だけで合計3700人余りが不適切に計上されていたことが判明し、大問題となったことは記憶に新しいことでしょう。
これを受けて、国はあわてて今年4月までに約2700人の障害者を新規採用すると共に、年末までに約4000人を追加採用する計画といいます。また障害者雇用促進法を改正して、国などが障害者の人数を不適切に計上した場合、厚労省に是正「勧告」権を付与すると共に、民間企業と同様、行政機関にも障害者手帳の確認を義務付け、法定雇用率が未達成の省庁には予算減額のペナルティを導入することとされています。

2.ところで、何故このような「水増し」が起こったのでしょうか?

障害者雇用促進法では、国などの公的機関や企業などは「常時雇用している労働者」の一定割合(=法定雇用率)に相当する人数以上の障害者(身体障害者、知的障害者、2018年4月からは精神障害者も含む)を雇用することが義務付けられていますが、この法定雇用率は2018年4月から0.2%引き上げられて、現在は国や公的機関は2.5%、民間企業は2.2%となっています(2012年4月までに、更にそれぞれ2.6%、2.3%に引き上げられる)。
しかも法定雇用率を達成していない企業は、不足している1人分につき、月5万円の納付金を国の外郭団体に支払うこととされ、雇用率を達成した企業のさらなる職場環境の整備や新たな仕事の創出などさまざまな助成金として活用されると共に、未達成の企業が障害のある人を雇用しやすくする基金としての役割を果たしているのです(=納付金制度)。しかしながら納付金制度は、国などの公的機関の場合、適用除外とされており、かねてからこれらの公的機関についても適用すべきとの声がありました。
ところが国などの公的機関では、達成率が法定雇用率の半分以下にとどまっていたことから、今日のような水増しに至ったものと思われます(ちなみに民間企業では、2017年当時の法定雇用率2.0%に対して、実雇用率は1.97%と過去最高を更新していました)。
都道府県や政令指定都市では、障害者を対象として別枠で常勤職員を採用する障害者枠を導入していますが、国はこうした仕組みがなく、大半は非常勤職員として採用しており、当然のことながら予算措置もなく、障害者雇用の仕組みが整備されておらず、いわば「何の支援もなしで『一緒に働け』」と言っているのと等しい状況にあり、障害者を雇用することに消極的であったと言わざるを得ません。ちなみに海外の法定雇用率は、ドイツ4%、フランス6%など日本の2倍以上であり、ダイバーシティを推進するためには、障害者雇用を促進することが早急に必要とされています。

3.障害者雇用促進の「車の両輪」

このように障害者雇用促進法は、法定雇用率と納付金制度が「車の両輪」となって、障害のある人と共に社会を作り上げていこうという、いわば「共生社会」を目指すものであるにもかかわらず、今日の水増し問題は、図らずもこのような法の精神が官庁では生かされていないことを明らかにしたものといえるでしょう。しかも納付金制度は前述の通り、国などの公的機関の場合除外されており、早急に適用されるべきです(今回の法改正で、未達成の省庁は予算削減措置を受けることとされていますが、その実効性が試されるところです)。
では、障害者雇用を促進するためにはどうしたらよいのでしょうか?それを次回にみてみることにしましょう。

プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

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