社外相談窓口

ハラスメント対策最前線職場のダイバーシティ(11)

Q.<障害者雇用の実態は?その2>
ダイバーシティーを促すためには、障害者雇用にどのように取り組むべきでしょう?
A.障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法で、事業主は障害者に対する差別禁止、合理的配慮の提供義務が課されています。

1.「合理的配慮」の提供義務

「合理的配慮の提供義務」とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、障害者一人一人の特徴や、場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための個別の調整や配慮のことであり、例えば車椅子を利用する人に合わせたスロープやエレベーターの設置、机や作業台の高さ調整、あるいは知的障害を持つ人に合わせて、口頭だけでなく分かりやすい文書・イラストなどを用いて説明することなどがあげられ、これらの配慮は国や行政機関では法的義務とされ、民間事業主は努力義務とされています。また「障害を理由とした不当な差別取扱い」は、行政機関、民間事業者を問わず法的に禁止されています。
事業主にとって障害者差別禁止・合理的配慮義務の対象となる「障害者」は、「身体・知的・精神(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活を営むことが著しく困難な者」(障害者雇用促進法2条1号。但し精神障害については障害者手帳の交付を受けている者に限られる、37条2項)のことであり、合理的配慮の具体的内容については「合理的配慮指針」で詳細に規定されています(36条の5)。

2.「合理的配慮」のポイント

合理的配慮のポイントとしては、次の視点が重要です。

  • (1)法律で決められたからではなく、障害者の目線で! ・・・ 障害のある労働者に対する事業主の基本的対応としては、法定雇用率の達成、維持のため仕方なく雇用しているという考え方を克服することが第1です。仮にそのような考えを会社のトップや人事担当者が持っていた場合、それは従業員間の暗黙の了解となり、何気ない一言等で人間関係、職場関係が悪化し、トラブルへ発展していくことが少なくなく、一度トラブルになると当事者で話し合いや解決が困難となり、訴訟等に発展したり、ネットなどで「障害者を差別する会社!」「ブラック企業!」等の書き込みで会社が受けるダメージは無視できないものがあります。
    単に法律に決められたからではなく、可能なかぎり障害者の目線に立って実践していくことが必要であり、そのためには会社のトップが、障害者雇用についての明確なメッセージを明らかにすることが大切です。
  • (2)中小企業など企業規模が小さい場合、障害者を雇用する余裕がない等として、障害者雇用にしり込みして雇用率が低くなる傾向があります。しかしながら他方、既に雇用している労働者が障害を有するケースが近年増加しており、例えばパワハラなどによるうつ病等の精神疾患により休職等を余儀なくされる労働者が増加している事案をみれば明らかであり、今や全ての職場で障害者雇用を真剣に検討すべきなのです。
  • (3)障害者雇用については、障害者の実態を理解し、そのうえで具体的な職場環境の整備を行う必要がありますが、その場合何よりも重要なことは、従業員の理解と協力であり、これによって障害者雇用を促進することが、一人一人の従業員の個性を尊重するダイバーシティーの実現に資することになるのです。
プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

その他の記事

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