社外相談窓口

ハラスメント対策最前線「働き方改革」とワークライフバランス(3)

Q.本年3月、70歳までの就業継続を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(高年法、来年4月から施行)が成立しましたが、働き方改革との関連でどのような問題がありますか。
A.改正高年法により、高齢者の就労として、労基法や雇用保険の対象外とされているフリーランスが増加する可能性があり、働き方改革の柱に、高齢者の就業促進が掲げられている以上、高齢者が安全・安心に働ける就労環境を整えていく必要があります。

1.改正高年法とは

あまり知られていませんが、本年3月、新型コロナウイルス対策で揺れる国会で、改正高年法がひっそりと成立しました。働き方改革の一環として、65歳から70歳までの就業継続の確保を目指して、企業の努力義務に、「雇用」だけでなく、過半数代表の同意などを条件としつつ、「企業支援」やフリーランスなどの「雇用によらない」働き方が追加されたのです(図表)。
現行高年法は企業に対し、定年廃止、定年延長、再雇用などの継続雇用といった対応をとることで、従業員が65歳まで働ける機会をつくることを義務づけていますが、改正法はこれを70歳まで延長すると共に、現在の三つの対応に加えて、別の会社への再就職支援、フリーランス契約への資金提供、起業支援、社会貢献活動への参加支援の四つも選択肢として認め、企業にはこれら7つのうちのいずれかの選択肢を設けるよう努力義務を課し、どれを選ぶかは企業と労働組合が話しあって決めるというもので、将来的には義務化も視野に入れています。そのうえでフリーランス契約や起業支援など、雇用契約を結ばない選択肢をとる場合、従業員の収入が不安定になるおそれがあるため、企業に対して、従業員や勤め先と業務委託契約を継続的に結ぶよう求め、厚生労働省は今後つくる指針の中に働き手の保護策を盛り込むことにしています。政府は、改正高年法を通して、高齢者の働き手を増やして人手不足に対応するとともに、年金などの社会保障の担い手を厚くする狙いがあるとされています。

図表 70歳まで働けるよう企業の努力義務になる7つの選択肢

2.起業(=フリーランス)支援追加の問題点

今般の高年法改正の最大の問題点は、企業の努力義務として、雇用によらない働き方の典型であるフリーランス支援などが加えられたことでしょう。今回の新型コロナウイルス拡大による企業の休業の中で、フリーランスに対する雇用保障が大きな問題となり、政府は緊急にフリーランスを含む個人事業主に最大100万円を支給しています。ネット普及で企業などから単発の仕事を請負ういわゆるギグワークの広がりの中で、企業に所属しないフリーランスは、副業として行っている者を含めると、今やわが国では1000万人を超えて就業者の約16%に達しています(2020年6月24日付日経新聞)。
フリーランスは、一般の会社員とは異なり、雇用保障による休業手当や失業手当を受けることができず、仕事が原因でケガをしても労災保険の対象外とされており、このことは労災保険の3分の1が55歳以上であることからも深刻な問題となります。
働き方改革の下で「多様な働き方」が目指されている以上、企業まかせにせず、高齢者が安全・安心に働けるような就業環境を整えていく必要があるのです。

プロフィール

水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業

著書

「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年) ほか多数

その他の記事

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