社外相談窓口

ハラスメント対策最前線風通しの良い職場づくり -CSR活動の一環として-(5)

CSRと人権問題

風通しの良い職場づくりには、一人ひとりの違いを認め合いながら、組織の合意をつくりだす「ダイバーシティ・マネジメント」の実践が求められています。そして、多様性を活かす核となる「人権の尊重」は国際社会において、ますます重要な課題となっています。

そのことを象徴する事案がスポーツ界で起こりました。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)浦和レッズのサポーターによる「JAPANESE ONLY」という差別的横断幕の掲出と「無観客試合」という厳しい処分です。 **

企業は、常日頃から人権侵害を未然に防止するために「適切な注意」(デュー・ディリジェンス)を払い、社会的責任を果たす必要があります。今回はJリーグの対応から、組織が人権問題に取り組むヒントを示したいと思います。

① 人権に関する基本方針の確立と浸透

・Jリーグでは、2013年の国際サッカー連盟(FIFA)総会での「反人種差別・差別に関する戦い」の決議を受けて、関連する規定を整備し、所属クラブに対する周知を行っていました。

皆さんの組織では、人権に関する基本方針が実践的に活用されていますか?

基本方針や諸規定は、経営トップが専門家やステークホルダーの意見を取り入れて策定し、その内容を関係者に周知徹底することが必要です。

② リスクマネジメントの視点

・浦和レッズの例で言えば、差別的横断幕に気づいた観客から運営側責任者に「放置すべきでない」という訴えがあったにも関わらず、試合終了後まで撤去できなかったことで「クラブが差別的な行為に加担したと、とらえられてもおかしくない」(村井チェアマンのコメント)と判断されました。この判断軸は、ハラスメント問題の対応ともつながりますね。

事業活動に伴い、人権侵害や人権侵害への加担などが発生しないように、仕組みづくりやリスクマネジメントを行っていますか?

③ 迅速な対応とリーダーシップ

・Jリーグの村井チェアマンは「その行為を行った側がどういう考えに基づいていたのかということではなく、受け手がどのように感じたかということに目を向けるべき」「子どもたちに夢を届け、フェアなスポーツマンシップの見本となるべきはずのJリーグにおいて、今回のような事態が発生することは看過できない」と述べ、当該クラブに対してルールに則った厳しい制裁を決定しました。

人権問題が起きたとき、経営トップがリーダーシップを発揮し、適切かつ迅速に対応できますか?

人種差別に対しての厳しい姿勢は、世界的に見てもますます強まっている傾向です。4月には米プロバスケットボール協会(NBA)クリッパーズのオーナーが、黒人に対する人種差別的発言をしたことに関してリーグからの永久追放と約2億5000万円もの多額の罰金処分に課されたというのも記憶に新しいかもしれません。

会社という組織も、社会に対して大きな影響を与えるという意味ではスポーツ界と同様です。今回挙げた例は、今後の会社運営やCSR活動にも警鐘を鳴らしたと言えるでしょう。

違いを認め合い、一人ひとりが働きがいのある職場を作っていくために、スモールステップで何が出来るかを考え、実践していきましょう。

** 制裁内容 (出所:Jリーグ ホームページ)
1.対象行為

2014年3月8日、埼玉スタジアム2002で行われた、「浦和レッズ vs サガン鳥栖」の試合において、浦和レッズサポーターにより「JAPANESE ONLY」という差別的な内容の横断幕が、ホームゴール裏に試合終了まで掲出。

2.制裁内容

(1)けん責(始末書をとり、将来を戒める)
(2)無観客試合の開催(入場者のいない試合を開催させる)

(2014年5月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
NPO法人GEWEL(ジュエル)代表理事
一般社団法人経営倫理実践研究センター 主任研究員
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
経営倫理実践研究センター主任研究員、日本経営倫理士協会理事、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

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