ハラスメント対策最前線経営倫理とダイバーシティマネジメント(2)

「ダイバーシティ推進」で成果を上げていますか?

前回「女性活躍推進を形だけの取り組みにしない」ことが重要だとお伝えしました。実効性をもたせるためには、何が必要なのでしょうか。これまで見てきた様々な事例を通して、「ダイバーシティ推進で成果を上げている組織とそうでない組織は何が違うのか?」を考えてみたいと思います。

大きな目標・身近な取り組み

よく出会うケースとして、大きな目標を掲げすぎ、現状に即していないということがあります。先進企業の事例を取り上げ、目標にすることは悪いことではありません。しかし、「女性役員を全体の◯割にする」といったことを目標に掲げても、「何のためにそれをするのか」という検討ができていない場合は実効性のある「ボードダイバーシティ」や「ガバナンス強化」につながらないでしょう。
また、最終ゴールを明確にするのは良いことですが、「今年はどこまで実施するか?」「では今月は何をするか?」「自分たちには何ができるか?」といった、長期的なビジョンから落とし込まれた短期的な行動計画が必要です。そしてそれは現実的で達成可能なものでなければなりません。
活動する社員が意義を感じる、あるいは楽しみながら行えるかどうかということも大事なポイントです。
もちろん、トップや推進者によるコミットメントは大事なのですが、トップダウンになり過ぎていないかということは一考に値します。義務感に根ざした活動は長続きしないばかりか、社員のモチベーションを下げてしまうからです。

「自分事」・「自社ならでは」の視点を取り入れる

ダイバーシティ推進が機能している組織でよく見られるプロセスとして、下記のようなことがあります。

  • ① 経営トップが、自社の経営理念や経営方針とともに、「ダイバーシティ推進の意義」を自分の言葉で社員に語り、ビジョンを共有する
  • ② 具体的な取り組みについては推進者を中心として、個々人に考えさせる仕掛けを作る。例えば、「ダイバーシティとは何か」「それが自分たちの現場の仕事や会社の将来とどのように繋がっているのか」ということについて考えるためのワークショップ形式の研修を開くなど。
  • ③ 優先順位を決めて行動計画を立て、進捗を確認する。
  • ④ トップが定期的に現在の進捗を発表し、次のゴールや課題について共有する。

これらの取り組みは、大変地道なものですが、トップと現場を繋ぐという意味でも、持続的な取り組みを促すという意味でも、大変重要だと感じます。
「人ごと」ではなく、「自分ごと」として捉えるという個人の視点を持つことと、自分の組織ならではのユニークな視点や取り組みについて考え、実行するということは、個人と組織の強みを発見し、強化していくことにも?がり、積極的な組織開発や経営改善にも繋がっていくのです。

(2016年2月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
NPO法人GEWEL(ジュエル)代表理事
一般社団法人経営倫理実践研究センター 主任研究員
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グ ローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
経営倫理実践研究センター主任研究員、日本経営倫理士協会理事、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

その他の記事

お電話でのお問い合わせ

03-5273-2300

平日受付時間 10:00-17:00

フォームからのお問い合わせ

お問い合わせ