ハラスメント対策最前線経営倫理とダイバーシティマネジメント(6)

エシカル・リーダーシップ

これまで、個人と組織の持続的成長につながるダイバーシティマネジメントの土台として「お互い尊重し認め合う」信頼関係が大切であることをお話してきました。

今回は、そのために必要な「エシカル・リーダーシップ」という概念をご紹介したいと思います。「エシカル」は「倫理的な」という意味ですが、最近では「エシカルファッション」「エシカルジュエリー」など、地球の環境と社会に配慮して行動する姿勢や価値観としても注目されています。
ダイバーシティマネジメントの文脈では、性別、国籍、年齢、価値観など、一人ひとりの違いを尊重し、活かしあうためのリーダーシップの要素と捉えています。

エシカル・リーダーシップは、これまでのリーダーシップ研究の中で、リーダーの「倫理的な特徴」と「影響力」に関心が向けられ理論化されたもので、経営学、社会学、心理学等の分野にまたがり研究が進められいます。普遍的側面は下記の4つといわれています。

  • ① 誠実(Integrity)
  • ② 利他主義(Altruism)
  • ③ 集団・共同体的動機づけ(Collective Motivation)
  • ④ 励まし合い(Encouragement)

倫理的な発展段階

エシカル・リーダーシップが注目されてきた背景の一つに、「役割や地位としてのリーダーが持っている大きな影響力」や「社会的パワーをどのようにコントロールするか」ということがあります。エシカル・リーダーシップの考え方を社内に導入することでハラスメント防止や効果的なチーム運営に成果を挙げています。また、対話を重視することで、部下の動機づけや支援につながっており、人材育成という観点でも有効とされています。

数多くの経営倫理先進企業が教育研修の指標としている「倫理的な発達段階」においても、ピラミッドの一番上は「倫理的なリーダーシップをとる」ことであり、従業員と組織を、各段階をこなして上の段階に押し上げていくことが提唱されています。

自分の行動をふりかえる

自分自身がエシカル・リーダーシップを発揮できているかどうか、下記のチェックリストを使って確認してみましょう。

あなたは

  • 倫理観高く働いていますか?
  • メンバーに対し公平かつ敬意をもって接していますか?
  • 自ら模範を示すことによりリーダーシップを発揮していますか?
  • 倫理文化を強化していくことが、自らの責任であると考えていますか?
  • 反倫理的な行為が組織内で発見されたとき、それが決して容認されたり無視されたりすることがないよう留意していますか?
  • チームワークを大切にしていますか?
  • 誠実な話し合いと問題解決を促していますか?
  • 「倫理的ジレンマ」について自由に話し合える職場環境を支援していますか?
  • メンバーが反倫理的な妥協をしたり、不適切な近道をとったりする誘惑を感じることがないような目標や計画を設定していますか?
  • メンバーに信頼され尊敬されていますか?

まずはチェックリストを参考にして日頃からエシカル・リーダーシップを発揮し、着実に組織の中に浸透させていきましょう。

(2017年6月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
NPO法人GEWEL(ジュエル)代表理事
一般社団法人経営倫理実践研究センター 主任研究員
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グ ローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
経営倫理実践研究センター主任研究員、日本経営倫理士協会理事、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

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