ハラスメント・インサイト社内相談窓口のポイント 些細な事案も対応必要 傾聴が双方の納得感作る

社内相談窓口のポイント 些細な事案も対応必要 傾聴が双方の納得感作る

この記事は、労働新聞〔中小企業も実現できる!ハラスメントのない職場〕の連載を許可を得て全文掲載しております。

背景に関心持つ姿勢

第3回でも触れたが、今回の法改正で事業主に求められた措置のなかでも、社内相談窓口の体制整備と告知は、とても重要だ。とくに中小企業では異動による対応が難しいため、問題をこじれさせないためにも「初動」に当たる社内相談窓口の役割が重要になる。
社内相談窓口で最も重要なのは「ハラスメントかどうかよく分からない相談にも、真摯に向き合う」姿勢だ。実際、パワハラ指針のなかでも「パワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること」という文言があり、これは具体的なハラスメント行為がはっきりせず、どう解決したいか要望が明確でなくても、しっかりと相談を受けるということを意味する。もちろん、パワハラに限らずセクハラその他のハラスメント問題に関連する悩みや相談も同様だ。
相談担当者の方の困りごとの多くに、「ハラスメントではない相談が多すぎる」というものがある。

ハラスメントでない相談の背景

これには主に2種類あって、その1つは「ハラスメントではないかもしれないが、何となくもやもやする、納得がいかない」というものだ。話を聴いていく過程で、「この問題は別の同僚に相談すると良いかもしれない」「まだ上司に相談していなかった」と気付いていく場合が多く、相談を受けた側としては「そういうことなら、まず上司や同僚に相談してからにしてほしい」という気持ちになる場面もあるだろう。しかし、相談者にはまず身近な人以外の誰かに話してみることで、頭や気持ちの整理をする時間が必要で、そのために相談窓口を利用しているのだから、これは相談窓口が有効に利用されている例といえる。こういう段階での相談受付にこそ、社内相談窓口の利点があると考えて、相談者には「この段階で相談してもらって良かった」と伝えてほしい。
もう1つは、「上司や同僚とうまくいかない状況を、何とかハラスメントと認定してほしい」というものである。特徴としては「この発言はパワハラですよね?」などと繰り返し、なんとかハラスメント認定してほしいという割に、具体的な被害の事実を話さなかったり、「上司は自分のことが嫌いに違いない」といった自分の考えや感じ方、価値観ばかりを主張するものだ。このような場合はうっかり「それではハラスメントとはいえませんね」と言ってしまいそうだが、相談の段階でそう伝えると拒否されたように感じ、信頼関係が築けない。むしろ、なぜ相談者がそれほどまでにハラスメントを主張するのか、その背景に関心を持ち丁寧に聴きながら、その人の働きづらさや困っていることに寄り添うのが最優先となる。
どちらも相談者の「気持ち」を聴くという作業が最も大切で、ハラスメント相談がこじれるときには、相談の段階で具体的な事実を確認していないことと同時に、たいていの場合相手の気持ちを聴けていないケースが多い。「こんなことで相談してくるなんて…」という思いをいったんわきに置いて、相手の気持ちを十分に聴くことを意識するのが重要だ。

ゴールは秩序の回復

なぜハラスメント問題でもないのに相談者の気持ちを聴かなければならないかというと、ハラスメント相談はその事実をハラスメントとして認定するorしないがゴールではないからだ。ハラスメントに関係する相談のゴールは、問題に至る前の状態、つまり十分に仕事ができる環境や状況に戻ること。周囲のメンバーも職場でハラスメント問題に煩わされることなく、能力発揮できるように再整備することなのだ。それはハラスメント問題によって失われた職場の秩序の回復を意味する。ハラスメントかどうかの判断は、そのプロセスの1つにすぎない。とくに中小企業の場合は、問題が起こった後も同じ職場で同じように顔を合わせて仕事をする可能性が高いため、どのような結末になろうとも、何とか元の状態に近付ける努力がお互い必要になる。このとき、気持ちがこじれたままでは仕事にさまざまな悪影響が出て、結局うまくいかなくなってしまう。
ハラスメント問題が起きた際は、相談者から事実を聴き取り、事実調査の意向の有無を確認したうえで、行為者とされた人にも公平公正な調査を行い、最終的には会社がその事象がハラスメントかどうかの判断を行い、当事者にその結果を伝えることになる。このすべてのプロセスにおいて当事者の気持ちを「聴く」作業が必要で、相談者も行為者とされた人も「十分に気持ちを受け止めてもらった」という納得感が、職場の秩序を取り戻す段階で効力を発揮するのだ。

外部専門家と連携も

一方で、中小企業において社内の事実確認を行うのは、中立的な立場に立ったヒアリングができるかどうかと、守秘義務が守られるかどうかという点において、困難が伴う。最終的な判断は会社が行うことになるが、このプロセスについては社外の人材に委託する選択肢を持っておくのが良い。
たとえば、社内ヒアリングを監査役が担っているケースや、事実調査が必要な場合に備えて弁護士や社労士などと契約しているケースは、中小企業でもよくみられる。問題が起こってから依頼するのでは時間が掛かってしまうので、今回の法改正に合わせて、いざというとき万全な体制で臨めるように準備すると良い。
そして、社内の相談窓口担当者としては、ハラスメント問題を取り巻く世の中の状況やトレンドについては、常にアンテナを張っておきたい。法改正のタイミングはそういった情報が世の中にあふれており、その情報を社内の体制づくりや教育研修、告知にも取り込んでいくのと同時に、相談対応のスキルアップも継続的に行いたいものだ。社内ではなかなか相談もない状況では、とっさの時に自分の対応で良いのか不安になる。定期的に相談対応を学ぶ各種講座を受講するなどして、いつ相談があっても落ちついて相談者と向き合えるよう、準備しておくことが大切だ。

労働新聞 第3350号 令和4年(2022年)4月25日
執筆:株式会社クオレ・シー・キューブ 取締役 稲尾 和泉

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