ビジョナリー対談医師:帯津 良一氏

ビジョナリー対談

岡田康子 クオレ・シー・キューブ(以下、岡田):
本日はがん治療で大変ご高名で、100冊以上の著書もおありの帯津良一先生にお話を伺います。帯津先生はもともと外科医でありながら漢方、気功、そしてホメオパシーなど、いわゆる代替医療と言われるものも含めたホリスティック医学を進めていらっしゃいます。 私どもは職場の健康を向上させる取り組みをしていますが、本日は人の健康について伺いながら職場の健康について考えていきたいと思います。

ホリスティック医学とは

岡田:
まず、ホリスティック医学ですが、これはどのような医学なのでしょうか。

帯津良一(以下、帯津氏):
現在日本ではがんにかかると医療機関では手術、放射線、抗がん剤などの西洋医学的治療が行われます。これは悪い部分を切ったり、攻撃するなどの対処療法といえます。しかし、がんができるにはそれなりの理由があるわけです。それを作り出した原因にアプローチしなければ、再発してしまうことになりかねません。がんを作り出すからだを健全な状態に戻すために行われるのが漢方やホメオパシーなどに代表される代替医療です。ホリスティック医学とは状況に合わせて西洋医学と代替療法を組み合わせて体の部分ではなく、人をまるごと看て、癒すことを目指しています。

岡田:
先生はその中でもホメオパシーを推奨されておられますね。私自身は心の問題にかかわる仕事をしていますが、うつ状態になるとエネルギーが停滞してしまいます。そのようなときにはエネルギーを高めるケアをするといいと思っています。そういう面でホメオパシーに興味があります。詳しく教えていただけますか。

帯津氏:
ホメオパシーは、思想としては古代ギリシャの医聖ヒポクラテスに始まり、中世の怪医パラケルススを経て、サミュエル・ハーネマン(1755~1843)が体系化しました。エネルギーの波動によって患者の症状やこころを治していくエネルギー医学です。
ドイツなどでは医療保険の対象にもなっています。私たちの体は細胞だけでなく微細な波動エネルギーで成り立っています。いわゆる気というものもそれに含まれます。私はそれらをひとまとめにして「生命の場」と言っています。「生命の場」は肉体で完結しているのではなく、家庭や職場、国家、地球、宇宙にまでつながっています。だから、患者を治すためには患者と医師だけでなく、周囲の環境なども重要になってくるのです。

岡田:
その点を私は興味深く思っているところです。今職場でハラスメントなどの問題が大きくなっているのは、加害者個人の問題だけでなく職場そのものの改善が必要だからではないかと思っています。メンタルヘルスも個人治療の限界が言われはじめ、私どもでは職場に介入していくケースもありました。

ホメオパシーの健康観__身体、心、霊性

岡田:
ホメオパシーの健康観について教えていただけますか。

帯津氏:
ホメオパシーでは健康には身体(Body)の健康、心(Mind)の健康、霊性(Spirit)の健康があるといいます。
1)、身体の健康は「苦痛からの解放」
2)、心の健康は「情念からの解放」
2)、霊性の健康は「利己主義からの解放」
です。
深刻な病気ほど霊性のレベルから発して、心に、そして体に症状としてあらわれます。体の健康を維持するためには食べ物が重要です。体は血液によって、血液は食べ物によってできていますから、なるべく汚染されていないもの、生命力の高いものをいただくことが大切です。そしてその血液が体全体にうまく循環している状態が健康だといえるのでしょうね

心の健康とは「情念からの解放」ですが、人は生きているといろんな思いにとらわれる。その情念から解放されることが大切です。悲しみや怒りは身体の病を引き起こすばかりか、身体症状だけではなく、心の病気となって私たちの健康を蝕みます。ホメオパシーによってうつ病の患者さんもよくなっているケースもたくさんあります。また私はがん患者のために気功を勧めていますが、心の病にも気功は有効です。私たちは緊張状態がつづくと交感神経の働きが優位になります。体が疲れているのに眠れないなどの症状がでてきます。リラックスするためには深い呼吸、いわゆる丹田呼吸をするといいでしょう。いやな気分も息とともに吐きだしてみることです。

ホメオパシーの世界的権威であるヴィソルカス氏は、霊性の健康は「利己主義からの解放」だと言います。私たちは目先の利益や生活の便利さばかり追求して、地球の、自然の調和を乱しています。その中で自己の利益を追求し、いがみ合い、紛争を繰り返しています。しかし、霊性の健康を目指すのであれば、ここでは人間同士、国同士が互いの立場を尊重しながらいい関係を作っていくことが大切だということです。

岡田:
「霊性の健康は利己主義からの解放」という考え方にとても共感しました。どうも最近は会社も地域も、ひどい場合は家族も守ってくれない世の中になってきているので、自分のことは自分で守ろうという、言い換えれば過度な権利意識が横行しているように思われます。それは霊性の健康という観点からは間逆のアプローチということになりますね。
それによって苦しみ、惨めになるのは心の問題としてとらえていましたが、違う次元の話、ということになりますね。

場のエネルギーを高め、一人ひとりを健康に

帯津氏:
私は「場のエネルギー」ということをずっと考えてきています。病気が治る患者さんを見ていると、いい場に身を置いています。ホリスティック医学では、修理工ではなく庭師になろうというスローガンがあります。部分を治すのではなく場の歪みを修正したり、エネルギーを高めることをやっていこうとしています。私たちは宇宙からエネルギーを受けて生かされているのですから、そのエネルギーを高めるようなことを行っていくといいんです。人と人との関係も互いに尊重し、意識しあうことで場のエネルギーが高まっていきます。結果的に一人ひとりの健康が高まります。

岡田:
それは職場においても大変参考になる考え方ですね。職場で問題が起きたとき、誰かの責任にして非難したり、排除したとしてもいい結果は生まれません。いい関係、いい場を作ればいい仕事もできると思います。西洋医学のように切りとることで問題への対処をするだけではなく、東洋医学のように職場そのものの健康を高めていくことが大事なのですね。いわゆる“養生”が職場にも必要なんだな、とつくづく思います。本日はありがとうございました。

(2016年4月)

帯津 良一

1936年2月17日埼玉県川越市に生まれる
東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。
そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設
現在に至る。

日本ホリスティック医学協会名誉会長
日本ホメオパシー医学会理事長

著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。
その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。

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