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ハラスメント行為は、なぜなくならないのか?

Qこのごろ、熊本市での部下へのパワハラ(パワーハラスメント)や、柔道の内柴容疑者のセクハラ(セクシャルハラスメント)事件など、ひどいハラスメント問題が立て続けに起こっています。普通に考えれば犯罪行為とも思えるようなハラスメント行為は、なぜなくならないのでしょうか?不思議でたまりません。
A昨年末に報道された2つのハラスメントに関する事件に、このような疑問を持たれる方も少なくないと思います。熊本市の事件では、40代の上司二人が、入社間まもない部下に毎日30分~1時間の正座を強要、そのうえ仕事になにかと言いがかりをつけ、2年半にわたり昼食代を払わせていました。内柴容疑者の事件は、未成年の女子柔道部員を泥酔させたうえ、ホテルの部屋に送って乱暴したとのことです。どちらも、明らかに犯罪行為レベルですし、行為者の人格を疑ってしまう出来事です。

しかし、これらの事件を、人格のゆがんだ人が起こす特別な出来事だ、と他人事のように考えていると、知らぬ間に自分もハラスメント加害者になってしまうかもしれません。実は、上下関係が固定化されている環境下では、その主従関係がエスカレートして、とんでもない結末を迎えてしまうという実験結果があるのです。

1971年に、アメリカのスタンフォード大学で、ある実験が行われました。それは後に「スタンフォード監獄実験」と呼ばれる有名な心理実験で、心理学者フィリップ・ジンバルドーの指導の下に、模型の刑務所で一般の大学生ら21人を集め、看守役と囚人役の2グループに分けました。そして、刑務所で当時行われていた行動を、それぞれの役に行うよう指示しました。すると、看守役の人々は、次第に囚人役に対して罰則を与えたり、暴力を行ったりし始めました。この実験は2週間行われる予定でしたが、あまりにも看守役の暴行などがエスカレートしすぎたため、6日間で中止されました。

2002年に作られたドイツ映画「es(エス)」は、この実験をもとに映像化しています。

この実験では、強い権力を与えられた人と、権力を持たない人が、狭い空間で一定期間過ごすと、権力を持つ人は次第に理性を失い、暴走してしまうということが明らかになりました。しかもそれは、元々の性格や生い立ちなどとは関係なく、「強い権力」という役割を与えられただけで、そのような状態に陥ってしまうのです。

昨年末の2つの事件と、この実験結果を重ねて考えてみれば、これが決して特別な人が起こす犯罪行為とは思えないことがわかります。上司や指導者が、部下や部員に対して絶対的な力の差があることは言うまでもなく、上司側も無意識のうちにそれを感じています。初めは小さなミスの注意や叱責などの出来事でも、次第にエスカレートして犯罪行為レベルのハラスメント行為に発展してしまうのです。私たちの調査でも、特にパワハラについては、閉鎖的で固定化された人間関係の中で起こりがちであることがわかっています。犯罪レベルのハラスメント行為は決して他人事ではなく、いつのまにかエスカレートして、自分が加害者になっても不思議ではない、と自覚を促すような教育研修が必要です。

また、このようなひどいハラスメントを防ぐには、固定化された人間関係に風穴を開けるような、柔軟な人間関係を職場全体で作る必要があります。ひどいハラスメント行為を見かけたら、周囲の人は「あれはひどいよ。早く会社に相談したほうがいいよ。」など被害者を支えるべく関わったり、行為者の上席にあたる上司が、加害者に助言や忠告したりするなど、第三者の効果的なかかわりが求められます。教育研修では、「見て見ぬふりはハラスメント行為をしているのと同じです」と念を押すことも重要です。

犯罪レベルのハラスメント行為は、被害者はもちろんのことですが、加害者にも悲しい末路が待っています。職場の仲間から、被害者も加害者も出したくないのだ、という思いを共有することが、ひどいハラスメント行為を食い止める第一歩になります。

(2012年)

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