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ハラスメント相談の現場からVol.29 “得意分野” の落とし穴

Vol.29 “得意分野” の落とし穴

ついつい厳しい指導に走ってしまう人たちの話を聞いていて、一つ興味深い共通点を発見しました。ひょっとすると、多かれ少なかれ万人に共通していることかもしれません。

パワハラ行為を指摘されたW氏は頭脳明晰で歯に衣きせずズバズバ正論を展開する切れ者。あらためて行動を振り返り、自分にとってもっともストレスなのは、会議でのやりとりのズレでも、部下の反応の鈍さでもなく、「仕上がってきた部下の報告書に目を通す時」と自己分析しました。さらに話を聞くと、W氏は報告書作成の達人で、「若い頃からさほど苦労なく」短時間で簡潔に過不足なく仕上げていたそうです。目下問題となっている部下は、意欲的で意思疎通にもとりわけ問題がないのですが、最後の最後、報告書作成を託すと、W氏曰く、「優秀な彼がどうしてこんなことできないの?」と「不思議なほど低レベル」のものが上がってくる、とのこと。その時のW氏の苛立ちの背景には、「質の高いものができて当たり前」という大前提があり、部下に対して過剰と思われる否定的感情が沸き起こるのだろうと推測されます。これはW氏に限ったことではなく、誰しも当てはまることではないでしょうか。

日頃、私たちがイラっとくる典型的な状況を思い起してみて下さい。職場でもプライベートでも、おそらく自分にとって「何でもない簡単な(と思っている)こと」を相手ができていない(自分のスタンダートに達していない)場面ではないでしょうか。さらに、パワハラ行為に至っている人たちは異口同音、「決して難しいことではないはず」、「自分(私)にできるのだから部下もできて当たり前」と言います。果たしてそうでしょうか? 発想を転換し、「自分の不得意分野は何だろう?」と考えてみるのも部下との膠着状態を脱する一手です。「自分だって簡単にできないことがある」という発見は、相手の立場に立つ第一歩。そう、自分の得意分野を押しつけ相手を非難している人は、「他人の気持ちを慮ること」が苦手な人なのかもしれません。不得意分野と向き合って磨きをかけること、その難しさを体験することは、部下指導を行う上で大いに役立つでしょう。

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