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ハラスメント相談の現場からVol.71 “普通”を普通に使うには?

Vol.71 “普通”を普通に使うには?

まだまだ自粛コールがあちこちで鳴り響く中、「あー、コロナ禍以前の普通の生活に早く戻りたい」、「どうってことのない普通の生活の有難味がよく分かった」など、嘆息と共感の声がそこここから聞こえてきます。

某社企画販売グループリーダーAさんの口癖は、「普通、考えたら〇〇のはず」、「普通は△△でしょ」など。部下への指示や注意には、必ずと言ってよいほど‟普通”が出現します。オンライン打ち合わせ中も、Bさんの提案内容について、「今頃こういう企画を出してくること自体、普通ありえないでしょ」、Cさんの質問に対し「普通に考えたら、この場で聞く前に自分で答えを出すよね」、Dさんへは「普通、もっと早く連絡とってるよ」という具合です。

私たちが日頃、何の気なしに使っている‟普通”という言葉は、「ありふれた、通常、当たり前の」という意味あいで用いられ、大多数が支持している一般常識に近い事柄を情報として簡潔に伝える際に有効、と考えられます。たとえば、「日本人は家の中では普通、靴は履かない」。この文章を目にしても‟普通”という言葉に違和感を抱くことはなく、とくに不快な感情を伴うこともありません。さて、先ほどのAさんが‟普通”を頻発している会議の場面、会話のやり取りを思い浮かべ想像を膨らませてみると、かなりこれとは趣が異なることに気づくでしょう。Aさんが‟普通”を口にする時、背景にはAさんの強い信念「‟普通”(=私)は正しい」、「‟普通”のことができないのは許せない」があり、さらにはその価値観に基づいてAさんが相手をコントロールしようとしてもどうにもならない現状に苛立ち、周囲との関係を悪化させているのが見えてきます。また、‟普通”という言葉を用いることにより、あたかも大多数を味方につけたかのように見せて相手を壁際に追い込むやり方からは、Aさんの責任逃れや自信の無さともとれる姿勢が浮かんできます。

これらのことに気づいたAさんが始めた新しい試みの一つ目は、‟普通”という言葉を口にした時に不快な感情が湧いてくるかどうか吟味することで、相手への価値観の押しつけになっていないか自覚すること。二つ目は「‟普通”は〇〇だろう」を「私は〇〇と思う」に言い換え、他の人たちがどう思う(どう行動する)のかは別として「私」を主語にすることで自己責任とする、ということです。この二つを組み合わせればAさんも普通に‟普通”を使いこなすようになるにちがいありません。
言うまでもなく、冒頭に記したコロナ禍渦中で私たちが懐かしみ、希求する「‟普通”の生活」は、模範的活用例でした。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2021.03)

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