ハラスメント相談の現場からVol.16 匂いか、臭いか

Vol.16 匂いか、臭いか

汗ばむ陽気から汗だくの猛暑へと移りつつあるこの時期、近年ますますクローズアップされているのが“におい”問題です。“におい”は、“匂い”か“臭い”か、で印象がずいぶん異なりますが、受けとめられ方一つでスメルハラスメントという造語にまとめられたりもします。

ファッションセンスが良く、いつも身だしなみを整え颯爽とオフィスへやってくるAさん(40代)。ビジネスマナーも非の打ちどころがないのですが、一つだけ問題があります。Aさん自身はもちろん、Aさんのデスク周り、Aさんの通った跡に決まって香水の強烈なにおいが漂っているのです。「香りは嫌いじゃないけど強すぎて頭が痛くなる」と女性陣の間でも不評ですが、男性陣はさらに手厳しく、「近づきたくない」という人がいるほど。Aさんにも言い分があって、「夏場は汗をかくし、体臭が気になるので香水は必需品」だそうです。

まったく別の“におい”の話があります。総務のCさんは販売のBさん(30代)について、Bさんの同僚から「席の近いBさんの体臭が気になって仕事にならない。何とかして欲しい」との相談を受けました。「夏場はこまめにシャワーを浴びたりデオドラント剤を使ったりするのはエチケット。自分でも気づいているはず…」とのクレームに、下手に注意すると“人権問題”に発展するのではないか、とCさんは頭を抱えてしまっています。
嗅覚は慣れの効果が出やすいため、前者の場合、当のAさんはしだいに香りにマヒしてしまい、どんどんエスカレートしてしまった可能性があり、後者の場合は、そもそもBさんに自分の体臭は“におわない”可能性があります。Aさん、Bさんともにまったく悪意がないのは確かですから、“ハラスメント”として対応してしまうと当事者を傷つけたり、職場の雰囲気を悪化させてしまったりします。

問題解決のポイントとして、「その“におい”はコントロール可能か否か?」を一つの指標にすると良いでしょう。Aさんは香水のつけ方を控える、Bさんは身体の清潔を保つ、というシンプルな自助努力で解決は可能です。AさんもBさんも悪気がないだけに、きちんと冷静に説明され、解決策を提示されれば、協力を惜しまないはずです。“におい”を通り越した人間関係の問題に発展する前に、早めに芽は摘んでしまいましょう。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2016.06)

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