ハラスメント相談の現場からVol.19 一人ひとりの潜在能力を開花させるには

Vol.19 一人ひとりの潜在能力を開花させるには

本年4月に女性活躍推進法が施行されましたが、現実とのギャップはまだまだ埋められそうにもありません。相談室に入ってきたエピソードをご紹介します。
某企業の営業部で10年余り仕事をした後、G子さんが家庭の事情で自ら希望して総務部へ配転されたのはこの春のこと。新天地は総勢7名のうち6名が女性で、当初は“家庭的”な雰囲気に居心地の良さを感じていました。しかし、男性ばかりでの会議の際、「お茶、お願い」、「コピーをとって来て」などの注文に二つ返事で従い、時には残業もいとわずに応じる女性同僚たちの姿にカルチャーショックを受けました。「私たちの業務ではないでしょう」と言うG子さんに返ってきた言葉は意外なものでした。「女性社員の業務として代々引き継いでやっている」。以来、G子さんは職場で浮いた存在となり、「営業から来たと思って偉そうに…」との陰口も聞こえて気持ちが滅入る日々を送っています。

どこの職場にも多かれ少なかれ“慣習”や“伝統”があるでしょう。それらは理屈や疑いを挟む余地なく綿々と引き継がれてきたため、中で働く人間にとっては“当たり前”で抵抗がなくても、外の人間には違和感が強く、受け入れられないと感じるものもあります。G子さんのケースがまさにそうでした。もともと“お茶くみは女の仕事”という古典的な意識から自然に生まれた業務だったのかもしれませんが、男女雇用機会均等法を持ち出すまでもなく疑問をもたざるをえませんし、さらには、異なる意見や価値観が生じた際に多数派が少数派を排除する職場風土も大いに問題です。「やっぱり、女性の敵は女性」と安易に総括されかねない点も心配です。
長年、慣れ親しんだ働き方や仕事観を見直し、新たに“何か”を取り入れるのは実に勇気が要ることです。男女の役割分担については個人の趣味や好みの問題ではなく、職場としてどのような働き方が適切なのか、皆で徹底的に話し合う機会を設ける必要があるでしょう。その際、ダイバーシティ・マネジメントの観点も有効でしょう。それが一人ひとり、職場を構成する個人の意識を変革し、潜在能力を最大限に引き出す絶好のチャンスでもあるのです。

●ダイバーシティ・マネジメントに関しては、
弊社ウェブサイト上、「職場のハラスメント対策情報コーナー」に連載中の「経営倫理と
ダイバーシティマネジメント
」を参照ください。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2016.09)

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