ハラスメント相談の現場からVol.30 情報社会における“通報”

Vol.30 情報社会における“通報”

最近、テレビなどでなにがしかをスクープされ、槍玉に挙げられた当人が謝罪会見を開き、それをまたマスコミに叩かれる、という一連のバッシング騒動が目につきます。“動かぬ証拠”とつかんだ情報をつきつけられ、公衆の面前で追い込まれる姿には一抹の同情すら覚えてしまいます。芸能人や政治家・官僚などの公人にとっては、一般社会が即、“通報窓口”とも言えるかもしれません。

一方企業では、2004年に公益通報者保護法が施行され、ハラスメントを含めたコンプライアンス問題について社内外の通報窓口に従業員が報告・相談できる制度を整えるようになりました。制度が整い、恙無く運用されれば、不祥事と呼ばれる問題は根絶され、企業の健康度は万全…、と思われるのですが、まだまだ問題に気づいても従業員が口をつぐんでしまう傾向はなくなりません。
制度が活用されない原因の第一は、通報したことでの不利益扱いへの不安です。保護法が制定されて11年余り経つのに、自らが身をおく企業への不信感がここまで拭えないのか、と暗澹たる気分になってきます。が、日頃意識する機会の少ない“法律”よりも、日々接する人たちとの関係(言動)や職場の雰囲気、風土など、肌身で感じていることを信じるのは、当然といえば当然でしょう。「通報窓口と言ったって、どうせ形ばかり」との冷めた声も耳にします。次に、せっかく制度を整えたのに情報が行き渡らず、社内で周知されていない、という残念な事実も見受けられます。従業員が知らなければ、制度はあっても無いに等しいでしょう。3つ目は、運用上の問題です。例えば、せっかく相談や通報が入っても、問題解決のプロセスにスムーズに乗せることができず、相談・通報者に「相談しても無駄だった」と不満や怒りが残ったり、窓口担当者と対立が生じたり、最悪の場合は「さらに傷ついた」と二次被害に発展したりすることがあります。そうして、このようなネガティブな情報は、報道さながらあっという間に社内に広まってしまうのです。

情報社会がここまで成熟してしまうと、私たちは情報の持つあらゆる側面に留意し、その取り扱いに時間もエネルギーも費やし取り組んでいかなければなりません。そのうえで、企業として“通報”にどう対処するのか、その指針をきちんと示す。それが、企業と従業員との間に信頼をもたらし、今日において最適な通報の在り方へと導かれることでしょう。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.08)

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